さよならなんて言えないよ


さみしいなんて口にださないと言ってた彼だったが、そのままどこかに消えていってしまいたいと思った。でも、いつもの深夜にいつものように家に帰宅する。奥さんの笑顔は悲痛な笑顔。笑顔を見せることで許しを求めている。これ以上、彼から許しを得ようとしている。私のせいじゃないよね、という呪縛からひとりだけ先に逃げようとしている。


これは、彼にとっての第二の苦痛。


飲んで全てを忘れられる人がうらやましい。その程度の人生を生きている人たちがうらやましい。


賛同者が誰もいない。


いつかどこかで、僕も、「あ、この人と僕は全てわかりあえる」なんて人と出会えるのだろうか。もう諦めた。